防衛装備品・システムの取得・調達業務における部外力活用
(財)DRC研究委員
はじめに
政府機関による最近の物品/システムあるいはサービスの取得・調達においては、多くの新しい問題がある。以前は、政府当該機関がその取得所望物件に関し自らの手でその機能・運用性能要求及び仕様書を明確に記述し、かつ受領検査及び評価を行っており、企画・受領部門とは独立の会計・調達等担当部門で予定価格算定や競争入札による購入が可能であった。しかし技術革新時代においては、(一部の仕様確定物品や汎用市販品を除き)それが困難となり、いかにすれば最新技術を用いかつ将来への移行がなめらかで、自分たちの業務遂行に合致(最適)する物・システムを、できるだけ早く、かつ安価に入手できるかに苦慮しているのが政府側調達関係者の実態である。さらに電子政府関連プロジェクトなどの新規ものでは、将来を見込んでの業者による意図的ダンピングの可能性があり、その防止のための価格評価をいかにするかの問題もある。このような背景から、昨今は広義の取得・調達業務遂行にあたり、これまで以上に他の政府関連機関及び民間側(業者やコンサルタント等)の専門的知識及び経験による支援・協力を期待せざるを得ない状況である。
ここでは政府機関としての現代における広義の取得・調達業務をまず分析、ついで政府側職員として期待できる取得・調達関連知識・技量を検討する。その後米国政府(特に国防省)の取得制度及び部外力活用(Advisory and Assistance Services発注)方式及び最近の電子政府がらみで我が国の政府調達方式改善検討結果を参考としながら、我が国防衛調達・生産の背景や調達規模等を考慮しつつ、防衛装備品取得・調達の改善に焦点を当てた各種部外力活用方式の検討を行い、提言を試みる。
1.現代における政府機関としての(広義の)取得・調達業務内容
繰り返し調達品や一般カタログ品(需品等)の要求内容や性能等がほぼ明確であるものを除き、いわゆる仕様書が明確にしづらいものの取得・調達業務を大別分類すれば、大略して@業務分析、A(運用)要求分析と要求定義、Bプロジェクト構想・計画の立案・概念設計・予算策定、C見積もり要求書・提案書要求書・仕様書作成、D調達品・システム決定と業者選択、E性能評価・解析及び要求へのフィードバック、F維持計画策定・実践と改善計画立案・フィードバック、となるであろう。
政府組織としての業務・職掌内容は時代・環境とともに変化するが、現代はIT技術の進化に合わせても改変する方向にある。その顕著な例が米国連邦政府のClinger- Cohen Actに基づくFEAF (Federal Enterprise Architecture Framework)構想(1)で、新しいIT技術に合わせての業務のあり方見直しを、政府各機関共通にまで押し進め、政府予算全体の効率化を図ろうとするものである。FEAFガイドラインにより、現在の業務の見直し、将来のあるべき姿の構想立案、将来への移行計画の立案等の実施を要求し、それに従わない案件プロジェクトについては連邦政府予算を認めないというものである。米国防省はそれを先取りする形でC4ISRアーキテクチャ/JTA構想を進めてきたが、最近FEAFによるさらなる見直しを開始している(2)。我が国でも経済産業省がリード役で電子政府関連にこの方向付けを行っている(3)。こうした業務分析は、その組織の位置付けと組織の業務内容に対する経験と深い洞察力、並びに最新のIT技術の知識・経験の背景およびリーダーシップを必要とし、政府機関職員の中にそのような人材を求めることが可能かの問題を含んでいる。
防衛分野においては、国の安全保障構想による防衛構想と連動した装備構想に基づき、取得調達の元になる特定分野の業務分析が実施される。IT技術の影が濃い現在、防衛分野にもFEAF的な業務分析が必要であり、総合調整が要求される。
(2)要求分析と要求定義
要求物件の内容・性能及びそれを実現する技術内容が複雑化している現在、要求分析と要求定義は取得・調達における最大の困難な問題である。運用知識に加えて新技術内容及び製品の理解・市場動向把握が必要となってきている。試作・評価あるいはシミュレーションの実施と評価を総合判定して要求分析・要求定義となることも多い。
一方で取得・調達品の性格にもよるが、計画時点で最終的な調達品の性能が概略明示できる場合(プラットフォーム兵器システム等)と、およそのイメージはあっても必ずしも明示できない場合(意志決定支援システム等)とがある。後者では運用者自身当初に要望事項を完全に明示できず、使用して初めて要求内容が決定できることが多い。このため最近の防衛取得・調達では、進化型取得(Evolutionary Acquisition/ Development)やスパイラル開発手法が奨励される傾向にある。この場合は、その手法の知識経験に加えて、技術成熟度の把握・予測及び洞察力の問題が大きい。
(3)プロジェクト構想・計画の立案、概念設計、予算策定
政府機関の行政担当者としてもっとも能力を発揮することが期待される分野である。現代では前項の要求定義の明確化が困難という問題がこれに大きな影響を与えている。すなわち運用者側からの要望を元にして関係部門との調整のもとで企画立案していく作業の根拠となる点(取得物件内容の明確化及び概略価格推定)が曖昧で、いわゆる従来の行政能力の他に、技術・製品知識・システム構築管理能力(洞察力)が要求される。特に基本となる予算推定にあたっては、関連システム構築・管理の経験的知識並びに将来の技術成熟度の予測能力が必要とされさえするのである。
(4)見積もり要求書・提案要求書・仕様書作成と業者選択
要求定義が難しいという現代の事情は、見積もり要求書・提案要求書・仕様書作成さらには調達品・システム決定と業者選択に、従来とは異なる手順・手続きを必要とするこれらの業務は一体として関連しており、利害の衝突回避のために各部門にこれらの業務を分離して割り当てれば調整が困難となる。明確でない要求定義からいかに提案書要求書や仕様書を作成するか、提案書により要求定義や仕様書は変更される、見積もりは要求定義や仕様書により大きく変化する、等を考慮し、その中で競争原理を働かせ、安く購入するにはどうするのか等々、総合的な検討判断が必要であろう。
防衛調達関連の問題例としては、技術的新規性物品の予定価格算定困難性、仕様書不明確による未経験あるいは力のない業者の落札後の収拾問題、相互未了解内容による大幅業者赤字発生とその後の官側の予算取得苦労問題等があげられる。これらの問題の解決策については、米国防省の2段階業者選定方式(BAFO: Best and Final Offer調達方式やIDIQ/BPA調達(4)など)等が参考になるが、その実施にあたっては、政府側取得・調達組織の運営や要員の教育に関連する背景をよく考慮する必要がある。
要求定義のあり方からみて、現代では取得製品の性能評価・解析結果及び実際に運用し維持の実践過程から得られる改善要望等から要求定義へのフィードバックが頻繁にはかられるものと考えられる。つまり従来のECP (Engineering Change Proposal)適用等とは異なるもっと積極的な反映・ループ化である。ある意味では要求定義の時点からあるいはプロジェクトの当初から常に評価・維持結果反映をあわせて考えねばならない。また取得・調達関係者配置体制もそうでなければならないといえよう。
2.政府職員への 取得・調達知識・技量の期待範囲
前述の広義の取得・調達業務内容からみれば、担当する政府職員は、行政官としての企画・調整・実行能力の他に、購入品/システムのエンドユーザーとしての運用業務経験・知識と改善企画力に基づく要求分析と要求定義のとりまとめ能力、取得希望品/システムの背景知識を考慮した仕様書案作成能力、価格推定能力、提案書評価・審査能力等々広範囲な知識と経験が要求される。このような(業者能力とも重複する)能力を政府側職員としてはたして取得可能か、またそれは政府の職員として継続的に養成可能なのか、かつそれが政府として合理的なのかの問題を取り上げる。
一般に政府職員特に政策立案者としては、(多くの問題に対処するために)現実の特定項目の理解よりも、関連する事項の意見を聞いて回りそれぞれに対応して妥協の道を探ること、すなわち政策立案にこぎ着けるまでの種々のプロセスを重視しよく理解していることが求められる(5)。従って現代のような、有効な意志決定のために科学・技術に関する膨大な知識の必要性増大時代にあっても、真理の探究・客観的見方重視の技術者や技術内容及び費用対効果重視のメーカー技術者/管理者とは、本質的に期待される内容が異なっているとみるべきであろう。(実務レベルでは共通するところがありうる)
(1)政府職員が業者システム技術者と同等の能力を持つと期待される場合
政府が自ら取得物件の製造工程にまで関与する必要性がある、あるいはその方が得策と判断されるのは、取得物件量が多い場合あるいは秘密保全等にて政策的にそうしたい場合であろう。具体例としては自ら製造まで行った旧日本海軍における工廠での艦船建造や、自らシステム設計と評価を行った(製造は業者任せ、製造技術の各社の差違は容認)旧NTT(政府扱いとした)の交換機を代表とする通信機器取得がある。これらでは政府側が業者側システム技術者と同等の能力を有し、むしろシステム設計は自分たちの領分であり優れているという自負すらあったと思われる。(現行防衛庁調達でも艦船の設計は庁内で行っているという見方もあるがここでは別扱いとする。)
現代では全体の潮流として政府組織はむしろできるだけ小規模としたいこと、及び技術的には(取得コスト低減の意味からも)民需技術をできるだけ活用したいことの方向故に、政府として製造にまで係わることはないと考えられる。(我が国防衛調達規模の10倍近い米国防省の動向もそうである。)しかし戦闘機や戦車などの防衛特有調達品については、システム設計・評価等までは政府側においても業者の一級システム技術者相当にあたる(対抗できる)人を育てるべきという議論もあろう。これはそのことの可能性及びその人の政府組織内での処遇の問題もからみ微妙な問題である。
(2)取得・調達に必要とされるシステム技術・管理能力について
取得・調達に必要なシステム技術・管理能力とは、運用者(得意先)の要求を把握し、実現可能な最新技術とコストとのバランスをとって仕様書原案あるいは実質改版の提案及びシステム設計を行い、契約後はプロジェクト管理と共にシステム統合業務を実践、最終的にシステムの評価を関係者と共に実施するといった能力をさす。まさに1節の@〜F項に述べた取得・調達業務を技術・企画・管理の面で支える内容である。こうした能力を有する人材は、企業から見ればその企業の実力そのものであり、その養成には10〜20年にわたる研鑽、多くのプロジェクトへの参加経験及び若手最新技術者との継続交流、製造設備を含む製造技術の体得、それを支える組織の体制整備(それをベースとした本人の社内・社外を含む知識人脈形成)等が相乗して初めて可能となる。つまりこうした能力は、文書化された形式知、本人の経験として残る暗黙知、さらにそれを支える企業風土・文化の混在によって支えられるのである。従って技術者本人だけを切り出してもそれは維持しがたい(1年も立てば陳腐化)。こういった経験知識の取得を政府職員に期待することは、よほどそういう機会に継続して恵まれる場合を除き無理な要求といえよう。それをどうして入手し現代の政府取得・調達問題にどう反映するかが課題となる。
(3)システム技術者の臨時政府職員としての採用可能性
米国連邦政府では取得・調達関連業務への部外力活用が盛んで、そのため調達規定「FAR Subpart 37.2- Advisory and Assistance
Services」にて3種類の助言支援サービス(研究・解析・評価、管理支援サービス、技術支援サービス)を規定し、各機関ごとに契約手順を定めている。むろん外注してはならない業務の規定もあり、また常に受注業者との関連つまり利害衝突回避が配慮されることを要求している。業者に匹敵する能力を持ちかつ中立性(政府の立場で仕事をする)を持つ部外力委託先の確保ということである。米国防省/NASA等においてはこれをSETA (System/Scientific
Engineering Technical Assistance)契約(6)の採用あるいはFFRDC (Federally Funded Research & Development Center)への委託等で対処している。
我が国では電子政府構築における(2)項で述べたシステム技術・管理者能力確保にあたって、政府の取得・調達関係要員不足及びコンサルタント等ではいまひとつ実務経験に不安ありとの観点から、民間から臨時政府職員として人を採用する動きがある(8)。問題はいかにして優れた要員を確保するかということ及びその人を支援する技術能力集団の確保問題である。企業からみれば社内にいれば何百人の関係者を動かし何十億(何百億)円かの付加価値を持つ虎の子の技術・管理者を給与のみの支払い条件での出向には同意しがたいし、またシステム技術者経験のある年輩者の再採用も考えられるが、IT分野等では技術革新が激しくそれをフォローできる人となれば、いずれにせよ奪い合いとなる現状である。それと対になるべき支援技術能力集団の依頼先はどう選択するのか、その対価はどう見るべきかといった問題も大きい。さらに臨時職員への採用の場合、採用された人自身へのインセンティブ付け問題と、政府機関の中での調和(既存組織への整合及び権限・責任問題の明確化)をどうとるか、政府組織としていかにうまく受け入れ活用するかがあわせて重要であろう。
3.部外力活用の在り方検討(各種活用方式の得失)
部外力活用で成果を左右するのは、いかに部外力となる人たちのやる気を鼓舞させるかのインセンティブ付である。部外力となる人が(主流者ではなく)助言者の立場で優秀な成果を上げうるには、業務達成時のやりがい・充足感・将来への糧としての満足感及び金銭的・精神的評価充足感を得られることが重要であり、どこまでそれをかなえて結果としての成果を引き出せるかが部外力活用方式の重要事項である。
(1)表に出ない阿吽の呼吸での企業等への協力依頼
現在の日本国内における政府・地方自治体の取得・調達の多くにみられる方式であり、仕様書、検査実施要領、予算見積もり等々の実質作成作業を、将来の受注業者たる可能性の高い企業に依存してしまう。通常その作業は無償で、企業の営業活動費として処理される。契約は表面上一般競争入札により最低価格応札者と結ばれるが、仕様書等の関連で実質随契となる場合が多い。事情によりこの方式がすべて問題とはいえないが、いわゆる契約上の説明責任(Accountability)が表面的(実質曖昧)となり、1円入札問題や実質随契による価格高止まり問題の解決が困難である。
(2)取得・調達業務に関するSETAまたはコンサルタント契約を別に結ぶ方式
業務分析、仕様書原案作成さらには予定価格算定参考資料作成業務等を、本体調達とは別契約とし部外力活用を行う。プロジェクト毎に政府側担当者では困難な取得・調達関連の業務内容を、取得物件納入業者とは原則として別の業者に契約にて依頼するものである。このように分離契約にて仕様書等を明確化することが、適正な競争の促進(1社のみ入札の回避ひいてはプロジェクト全体価格低減の鍵)につながる。
この方式が広く採用されている米国と文化的に異なる我が国での適用には、それなりの配慮が必要であるが、もっとも有力な方式である。第1の考慮点は、部外力活用契約における本体契約との利益衝突の回避である。過去の実績等信頼ある業者への指名競争入札又は複数社への随意契約等が考えられるが、いずれの場合も本体契約には参加禁止等の中立性要求が必要となろう。
第2点は期待する部外能力の質の問題で、中立性を強調すれば評論家的になり、業者システム技術者なみの能力は期待できなくなる。米国のように部外力活用が本格化すれば、(システムベンダーとは別の)独立系の力のある業者が出現する。ある意味では需要の問題であり、必要性の頻度・予算により決まる、すなわち鶏か卵かの要素を持つ。大切なことは政府側の必要だとする意志の問題で、予算化されれば民間側は対応できるはずである。
第3に考慮すべき問題はその対価の算定方法である。民間では優秀なコンサルタントとの契約ではかなりの高額契約が合意される。公平性や説明責任を必要とする政府契約においても、これらの知的作業単独契約でも採算があう(単なる時間単価と作業時間の積価格ではない)受注のインセンティブが働く仕掛けを考えなくてはならない。
(3)臨時政府職員採用
これが可能となるのは、該当プロジェクトが巨大で多年度にわたるか、または政府当該機関での類似プロジェクトが継続し、その職員採用に見合う必要性がある場合である。ただし採用されたその職員だけで政府側が期待する業務をこなすことは不可能であり、プロジェクト毎に採用職員を補佐し支援する業務をSETA契約等であわせて発注することが不可欠である。すなわち本質的に(2)案のSETA契約等との組み合わせでなくては機能しない。
(4)諮問委員会あるいは審議会の活用
日本政府では政策立案のために数多くの諮問委員会や審議会を組織し活用している。しかしそこでは参加委員として中立性を意識した学識経験者や著名企業の代表者が多く、基本的にはボランティア活動であり、政府の政策決定に参加するという自己満足感・充足感及び名誉感・社会的賞賛への期待感が活動のインセンティブ要因になっていると思われる。従って取得・調達業務のような実務的で地味な、ある意味では泥臭い仕事については、インセンティブが働きづらく、その活用効果は疑問視される。
(5)契約前業務共同遂行方式(組合方式)
特定の工業界等の中立的団体、あるいは特定の(企業連合)組合へ、有償にて契約事前の政府担当者支援業務を依頼するもの。防衛分野では、構想設計、基本設計等の名目で特定工業界等に委託されている例がある。この場合の最大の問題は、ある意味で本質的に競合する各社からの参加者にボランティア活動が要求されており、頭脳を絞って最適案を検討するというインセンティブが働かないことである。
例外は競合各社からの参加者に共通の競争相手があり共通の利益追求目標がある場合である。その好例としては研究開発分野ではあるが嘗ての通産省主導による超LSI研究組合であろう。研究の主題が参加企業各社の固有技術改善テーマそのものではなく、露光装置といった開発の中核となる各社が共通に必要とする周辺技術におかれたため、参加企業各社の協調精神高揚及び技術者インセンティブがあがったと思われる。つまり参加企業の(前例ではオールジャパン的な)総合力結集を期待する場合は、それなりのインセンティブが必要であり、通常企業のインセンティブは受注拡大であるから、それに結びつく可能性の少ない他社を利するかもしれぬ政府への協力は期待しづらい。
(6)2段階契約方式による特定企業(複数)への部外力委託契約
概略の提案要求書から提案書を取り、複数の候補(第1次合格企業)社を選択する。選ばれた各会社と中立的立場での技術支援契約を結び、そのシステム技術者たちと政府側担当者の合同チーム(さらに独立したSETA会社要員,コンサルタントを交えることも考えられる)により、仕様書、予算要求資料/予定価格算定資料、評価資料等を作成する。合同チームでの討議により予算と仕様との妥協もはかられていくことになる。
討議の過程において政府側は、業者の製造ノウハウの反映を期待でき、業者側はユーザー側の運用経験ノウハウの吸収が可能となる相乗作用を期待できる。業者側作業の質を高めるインセンティブとしては、こういった事前作業の有償化もさることながらその作業の貢献度(仕様書等へのアイデア供給による)により本格受注の可能性が高まる点が大きい。合議を反映した仕様書・提案要求書(RFP/RFQ)により、あらためて第1次合格各社間の(指名競争)入札にて最終受注を決定する。決定後も最終仕様と価格との調整が可能な契約方式が考えられて良い。
この方式には各種の変形が考えられる。第1次入札後の合同検討により政府側で理解が深まれば、第2次入札は製造入札とSETA契約入札(技術・管理支援)の分割入札や、(規模による)分割入札と政府側自身によるとりまとめ等各種の方法等も考えられる。この方式はある意味では実質的競争の強化であり企業にとってはかなり厳しいが、事前作業をも有償かつ(個人ではなく)企業体としての総力提起が可能であること並びにアイデアの価値及び努力が報われるという意味で、協調(collaboration)が重視される現代においては受け入れ可能と考えられる。
この方式に類似した実例として、目標コストにあわせ仕様を変えていった、中部国際空港ターミナルビル建設調達(9)がある。報告記事によれば、発注側は候補者となった会社と膝詰めで交渉を重ね、コスト切りつめの知恵をお互いに絞りあったとされている(交渉から半年後に契約)。つまりうまくいかなければ候補会社となっていても打ち切りがあり得るというところで競争原理が働くのであり、会社にとっては厳しいが政府調達等における目標価格達成の好例であろう。
(7)取得・調達支援業務とシステム建設業務の一体契約方式
各社が絡むような複雑で巨大なシステム調達等にあたっては、プライム受注企業と一体になってプロジェクトを進めなければうまくいかないと割り切ったLSI (Lead System Integrator) 契約方式が米国に出現している。米国防省の地上ベースのミサイル防空システム契約及び将来戦闘システム契約(7)がそれである。すなわち提案書審査でプライム受注業者を決定、そのプライム業者にhonest brokerたることを要求し、政府と業者が一体となり(契約上は業者は支援)予算要求、仕様書、プロジェクト計画・管理等を進めていこうとするものである。支援業務部分の対価をどう算定するのか等興味深いが今後の経緯を見守りたい。この方式はある意味ではプライム企業がSETA業者機能を兼任するものであり、政府のプライム業者依存度が高くなり問題の生じる危険性もある。一方我が国の防衛調達においてかって行われ、現在も航空機・武器等で行われている、提案書合戦による(防衛庁)長官決裁による機種選定、それに該当する業者との交渉(予算化、政府仕様を補足する会社仕様書作成等)後の随意契約方式は、ある意味でこれに類似しているといえよう。ただしこれは政府側への正規の取得・調達業務支援がない、つまりその業務が有償契約ではない、という点で異なっている。すなわち説明責任(accountability)という面で見たときに違いがある。
終わりに
政府調達に係わる各種の業務を政府職員のみでは遂行が困難となりつつある現在、電子政府関連調達でも指摘されているごとく、現状における阿吽の呼吸の(受注可能性の高い)業者への依存体質は問題が多く改善すべきであろう。しかし政府職員の調達業務能力の向上には限界があり、又臨時職員の採用だけでも問題は解決しない。従って取得・調達業務の部外力活用が不可欠であり、政府は確信を持ってそれを進める必要がある。我が国での実施上の障害に対しては、対象案件の性格により各種のやり方・組み合わせを用いることにより、現在の会計法の下でも工夫次第で十分対処解決が可能と考えられる。
政府調達において最も重要とされることはその手続きプロセスの明確化つまり(国民あるいは会計検査院への)説明責任(accountability)であるが、いわゆるなれ合いを避けるためこれまでは政府内で組織対応に業務を縦割りに付与し相互チェック機能を働かせることで対処されてきた。しかし現代の複雑化製品の取得・調達にあたっては、従来型の相互チェック機能を働かせようとしても、結果的に形式的になる可能性が強い。すなわち「プロジェクト毎に検討チームを結成し総合的に判断しかつ検討資料を記録することによる説明責任を果たすようにする」、とともに「政府取得・調達関係者への過剰な期待負荷を軽減すべく、製造業者をも巻き込んだ積極的な部外力活用の実践をはかる」と組み合わせることにより、政府調達の説明責任をより強固に果たし、結果として効率的な政府取得・調達につながると考えられる。
「参考文献」
(1)”A Practical
Guide to Federal Enterprise Architecture” Chief Information Officer Council
Version 1.0, February 2001
(2)”DoD Architecture Framework 1.0 Update” Truman Parmele, STC 2003 Conference
(3)“政府調達のためのIT専門家について”ITアソシエイト協議会中間報告2002年12月
(4)“米国連邦政府の知的作業契約方式について”稲垣連也、月刊JADI、2001年6月
(5)”Bridging the
Divide Between Technologists and Policy-Makers”, Jon Peha,
IEEE Spectrum, March 2001
(6)“米国における技術支援業務(SETA)契約”稲垣連也、防衛技術ジャーナル1998年5月
(7)”DARPA, Army
Announce Future Combat Systems Lead System Integrator” Defense LINK News
Release, March 7, 2002
(8)“CIO(情報化統括責任者)補佐官の設置について”経済産業省発表2003年5月29日
(9)“トヨタが造る空港”日経ビジネス 2003年5月5日号